蛍光灯と LED では同じ白色光でも種類が違う話(光源のスペクトル変化)

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よく「」が「光の三原色」と呼ばれ、これが全部混ざると「白色になる」という話があります。それはそれで正しいのですが、ここでいう「色」とはなんでしょうか。

目は光をどのように受け取るか

私達がものを見るには「」が必要です。これは目を構成している細胞が光の刺激を受けることで反応し、その信号が脳で処理されるためです。私達の目には光を感じる細胞として「錐体細胞」と「桿体細胞」があり、主に色別に感度を持つのが錐体細胞で、色の区別なく明るさに感度を持つのが桿体細胞です。

ここで色別に感度を持つというものは科学的な言葉に置き換えると光の波長別に感度を持つということです。錐体細胞は光の波長によって感度(吸光度)が異なる 3 種類のものがあります。そのうち最も短い波長が「青」と認知され、中くらいの波長が「緑」長い波長が「赤」と認知されます。これが光が三原色であるとされる理由です。下のグラフに光の波長と錐体細胞の感度の対応を示します。

縦軸が各細胞の吸光度、横軸が対応する波長。破線の示す “R" のグラフが桿体細胞(Rod cell)、実線の示す “S, M, L" がそれぞれ短波長、中波長、長波長に対応する錐体細胞(Corn cell)の吸光度を示す。グラフ上の各数値はそれぞれの吸光度がピークを示す波長。Localized by Murahashi Kuriki, based on work by User:Maxim RazinUser:DrBob and User:Zeimusu. CC BY-SA 3.0. Source : Bowmaker J.K. and Dartnall H.J.A. (1980). “Visual pigments of rods and cones in a human retina“. J. Physiol. 298: 501-11.

色はどのように表現されるか

前述のように、光の波長の違いによって認知される色が異なり、光が三原色となっているのは人間の目の都合です(余談ですが、生物によっては 3 種類ではなく 2 種類ぐらいしか感度を持ってなかったり、違う波長帯に感度を持っていたりすることもあります)。

逆に言えば、人間の持つ錐体細胞が感度を持つ 3 種類の波長の光さえ使えれば、他の種類の波長がなくても様々な色を表現できるということです。

File:AdditiveColorMixing.svg
光の三原色のイメージ

そのためパソコンなどで利用されているトゥルーカラー(フルカラー)では R(赤), G(緑), B(青) の三種類の強弱で色を表現しています。

白い光でも光源によって含まれる波長が違う

4 種類の光源から発せられた光について、光の波長別強度分布(スペクトル)を紹介します。ここで用意したのは以下の 4 種類です。

  • 白熱灯
  • 太陽光
  • 蛍光灯
  • LED

以下にそれぞれの光源のスペクトルの画像を載せますが、色と目盛りの正確性はあまり高くありません。あくまでイメージだと思ってください。

またそれぞれの画像は強度が揃えられていません。例えば白熱灯より太陽光が暗いのはセンサーの感度が異なるためです。太陽光に強度を合わせると、他の光源がすべて暗くなってしまいます。

白熱灯(ハロゲンランプ)

白熱灯のスペクトル

画像横方向が波長 λ [nm], みやすさのために色をつけています。画像に示した S, M, L のバーは、人の錐体細胞が反応する短 (Short)中 (Middle)長 (Long) のうち感度が 50 % 以上になる範囲を示す目安です。

白熱灯は黒体放射のように熱によって生じる光のため、途切れのないキレイな連続スペクトルが得られています。S, M, L で示した人間の目の感度がある波長帯にも光があるので、この光は白っぽく見えます(微妙に青色が弱いので実際にはちょっと黄色っぽい)。

太陽光(大気透過)

大気を透過した太陽光のスペクトル

太陽光も白熱灯と同じく熱によって生じる光のため、白熱灯と同じく連続スペクトルとなっています。しかしところどころ黒い途切れがあるのが見られます。これは大気を通過したことによって大気分子によって特定波長の光が吸収されているためです。これらの暗線はフラウンホーファー線Wikipedia)として知られています。

蛍光灯

蛍光灯のスペクトル

蛍光灯は熱によって生じる光ではなく、電圧をかけることで蛍光管内部の水銀原子を反応させて紫外線を放出し、紫外線が蛍光物質を反応させることで光を出しています。発光の仕組みが違うため連続スペクトルにはならず、飛び飛びの波長で光る輝線スペクトルを持っています。

連続スペクトルのように万遍なく光の強さがあるわけではありませんが、S, M, L で示した目の感度があるところの波長に光が出ているので白っぽく見えます。

発光ダイオード (LED)

発光ダイオードのスペクトル

LED も熱によって生じる光ではありません。白色 LED は青色発光ダイオードから出た光を蛍光物質に当てて反応させることで他の波長の光を生じさせて白色にしています。そのため、もとの光である青色の輝線スペクトル緑から赤の波長の連続スペクトルを発生させています。

これも蛍光灯と同様に S, M, L で示した目の感度があるところの波長に光が出ているので白っぽく見えます。

光源別のスペクトルまとめ

光源による波長の違い
白熱灯、太陽光(大気透過)、蛍光灯、LED による光源別のスペクトルイメージ。420 nm 以下の波長はカットされている。840 nm 以上の部分には二次波の干渉が含まれる可能性がある。Murahashi Kuriki 2021, CC BY 4.0

4 種類のスペクトルの画像を 1 枚にまとめました。ヒトの目には白く見える光でも光源の種類によってその様子が異なることがよくわかります。この画像はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下で提供しておりますので、ご自由にお使いください(目盛り等の情報は厳密ではありません)。

色が変わるといえば

有機 EL ディスプレイのスマートフォンが画面ヤケした様子を「有機ELディスプレイが YouTube UI 形に画面ヤケした話」にまとめています。