D8 までオーバードクター(単位取得退学含む)して博士をとった話

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2023 年 9 月 25 日に私、村橋究理基は北海道大学より博士(理学)の学位を授与されました。博士課程の標準修業年限は 3 年とされているのですが、色々あって(なかなかうまくいかず)取得まで時間がかかった結果、博士後期課程に 8 年(7.5 年)在籍することになりました。

博士の学位取得のための論文や研究のあれそれとか、どういったところに苦労するとかいった話は、世の中に色々とある気がするのでそちらに譲るとして、この記事では取得までに一体何があったのかという実態について生活事情を中心に記録しておこうと思います。生活するために、色々と仕事と並走してました。

以下の話は、当然ながら私個人の事情などが多分に含まれる話です。一つのケースとして、何かの参考になれば幸いです。

ざっくり博士の 8 年間

私の場合、ざっくり 8 年間で身分として以下のような過程を経ました。

  • 2016 - 2018 年:博士課程(正規の修業年限内)
  • 2019 - 2020 年:
    • 博士課程(オーバードクター 1 年目)
    • 2019 年 4 月:北大発ベンチャー正社員入社
  • 2020 - 2021 年:(コロナ禍の始まり)
    • 博士課程(オーバードクター 2 年目)
    • 2020 年 4 月:博士課程を半年休学(2020 年 10 月まで)
    • 2020 年 5 月末:北大発ベンチャー 会社都合による退職
    • 2020 年 5 月末:北大短時間勤務職員(学術研究員)入職
    • 2020 年 10 月:博士課程復学
  • 2022 年:
    • 博士課程(オーバードクター 3 年目)
    • 2022 年 3 月:北大学術研究員 任期終了による退職
    • 2022 年 4 月:気球宇宙遊覧ベンチャー 入社(非常勤)
    • 2022 年 9 月:博士課程 単位修得退学(在学期間 6.5 年)
    • 2022 年 10 月:北大理学研究院 研究生 入学
  • 2023 年:
    • 2023 年 9 月:博士(理学)取得

結果として、正確には博士課程に 6.5 年間(半年休学含む)在籍し、その後に研究生として 1 年間在籍する合計 7.5 年間を博士の学位取得に使うことになりました。

博士後期課程入学からの 3 年間

2016 年 4 月 1 日から北海道大学大学院理学院の宇宙理学専攻へ入学しました。北大は 7 年目、所属研究室としては学部時代から修士を経て 4 年目になります。

入学後は研究活動はもちろんのこと、授業のティーチングアシスタント(TA)や、北大独自の仕組みであるティーチングフェロー(TF)などの業務に従事し、賃金を得ていました。これに日本奨学生機構の奨学金を借りて生活していました。

博士 4 年から 5 年まで

博士 3 年秋ごろには、ストレート(最短修業年限の 3 年)で学位が取れそうな雰囲気はありませんでした。ところが、秋頃に同じ研究グループの教授が関わっている北大発ベンチャー企業で従業員を募集していると声をかけられ、そこで 2019 年の 4 月から仕事をすることになりました。

北大発ベンチャーで仕事をすることは指導教員に許可をとっており、オーバードクターはそこで仕事をしながら研究を進めて学位取得を目指すことになりました。

北大発ベンチャーではリモートセンシングを使った農作物のモニタリングに関する研究業務に従事し、データ解析業務や農場での実施調査などの業務に従事しました。しかし海外出張が多く、博士の研究を進めることもなかなか難しかったこともあり、2019 年冬に休学することを決意しました。

指導教員と相談した結果、2020 年 4 月から休学することで手続きを進めていたのですが、北大発ベンチャーの方で色々と問題が生じ始めました。ちょうどコロナ禍などによる問題も重なったことで状況修復が難しい状況になり、結果として 1 年(1 年と 2 ヶ月)で辞めることになりました。

博士 5 年から 6 年まで

博士 5 年 (2020 年)からは北海道大学理学研究院で学術研究員として研究業務にあたりました。北大発ベンチャーのときと同様なリモートセンシングを使った農作物のモニタリングに関する研究業務に引き続き従事し、主としてデータ集積サーバの運用業務やシステム設計などに携わりました。ベンチャー企業時代と異なり、デスクワークが中心となりました。コロナ禍に入っていたこともあり、フィールドに出にくかったという事情もあります。

デスクワークが増えた結果、博士の研究に時間を当てやすくなりました。そのため、2020 年 4 月からの休学は半年間に留め、2020 年 10 月から復学することになりました。もちろん復学前から指導教員とは不定期で連絡をとっていたのですが、このタイミングで定期的に毎週ミーティングを実施することになり、研究をすすめていきました。

学術研究員の仕事はプロジェクトへ従事するタイプだったので、プロジェクト実施期間であった 2 年間(2022 年 3 月)で任期が切れることになりました。また博士の研究も 2 年間ではまだ博士論文執筆までに及ばず、任期後は博士課程学生(博士 7 年目)として学生に戻ることを検討していました。

2022 年 3 月は博士 6 年目の最終月であり、本来ならここで単位修得退学となるところでしたが、前述のとおり、半年間の休学が入っているので、2022 年 9 月まで学生の身分が継続できます。そのため、2022 年度の前半を博士取得への最後の勝負として気合をいれていく……つもりでした。

博士 6 年から単位取得退学まで

2022 年 2 月、大学の学術研究員としての任期が切れて単なる博士学生に戻ろうかと思っていたころ、恵迪寮の後輩であった修士学生から相談を受けました。今のバイト先で気象データを使ったプログラム作成の業務に携わっているので相談に乗って欲しい、というものでした。私自身は(研究対象は火星気象ですが)気象データの扱いに多少の習いがあることと、ある程度のプログラムなら書くことができるので、もしそこに仕事があるなら仕事をさせてくれないか、と申し出ました。

その結果、札幌にあるベンチャー企業で気象データを利用したデータ解析業務に従事することになりました。そこでは月に 82 時間業務にあたることを条件に、高待遇で賃金を得ることができました。そこで基本的に週に 3 日程度働き、残りの時間を博士の研究活動にあてていきました。

前述のとおり、2022 年 9 月が留年分も合わせた博士後期課程のリミットだったのですが、結局博士論文の審査に出すに至らないことが夏頃にはわかっていました。指導教員と色々相談した結果、北大理学院の場合は「単位取得退学後、1 年以内に審査に出せれば課程博士として扱うことができる」という制度が存在することを聞き、さらに 1 年間頑張ってみることになりました。私はこの期間を博士課程のロスタイムと勝手に呼んでいます。

2022 年 9 月末日、結局北大は単位取得退学することになりました。その後は研究生として北大には正規学生とは違う立場で在籍を続け、研究を続けることになりました。

単位取得退学から学位取得まで

先述のベンチャー企業では気象データを使った研究業務を続けながら、博士の研究を進めていきました。

北大理学院の場合、博士の学位審査は「予備審査」を経た後「公開審査会」を受けることで学位取得の可否が決まります。私の場合は「予備審査」の前にまずは内輪の研究グループでセミナー発表をする必要がありました。ある意味「予備予備審査」みたいなものでした。

2022 年 11 月末ごろ、「予備予備審査」としてのセミナー発表を行いましたが、5 時間ほど話した結果として、学位取得のレベルにまだ至っていないという判断となりました。指導教員と今後の方針についてよく相談したことを覚えています。

その後、翌年の 2023 年 5 月にもう一度セミナーを実施した結果、色々と指摘を受けたものの、予備審査へ出してもよいだろうという話になりました。それから 6 月には予備審査を実施し、主査・副査の教員の方々から合格をいただき、本審査に進めることになりました。その後、本審査である博士論文公聴会を念頭においた内輪の研究グループでのセミナーを 7 月中旬ごろに行いました。

最後、8 月初旬に博士論文の公開審査会が行われ、結果として学位授与の許可が下りました。

学位授与式

最終的に、私は 2023 年 9 月に博士(理学)の学位を取得するに至りました。

北大の学術交流会館で行われた学位授与式には、せっかくの(33 歳だけど)学生最後ということで、学生の制服を着て参加することにしました。

学位授与式に出ていたのは留学生と日本人学生が半々ぐらいで、30 人ほどの学生とその保護者や家族等が参加していました。式が終わったのち、総長が挨拶したりしていた演台などがすぐに片付けられなかったので「これはここで記念撮影していいってことでは?」と気づき、ドヤ顔で写真をとったりしたのでした。